「味より伝統」箱根を代表するホテルのメインダイニングだが、どれだけ高いものを食べても基本的にメニューは保守的で、驚きのおいしさには出会えない
評価3.5:★★★☆☆箱根宮ノ下にある富士屋ホテルといえば、箱根を代表するホテルだ。明治創業で外国人を対象としたリゾートホテルということで、ホテルの施設なども当時の最高級レベルの施設を今に受け継いでおり、非常に文化的価値の高い魅力的なホテルだと思う。
箱根を堪能し尽くすなら、一日はここに泊まりたいと思って泊まったし、和洋含め、ほとんどのダイニングでも食事をした。その結果として感想を言うと、富士屋ホテルは良くも悪くも「伝統を守る」というのがここのカラーなんだなということだ。
何が言いたいかというとね、単純に施設の快適さだったり、味の良さだったりという点で評価すると、今のホテルの施設やレストランには敵わないんだよ。だって明治時代の最高級だもの。これは一度泊まってみれば実感をするはず。でも、当時の伝統を守るというのはこのホテルの一番価値ある個性だと思うし、それはそれでよいと思う。
ということで、ホテルの施設に関しては別の機会に書こうと思うので、今回はメインダイニングのザ・フジヤでの食事の様子を記載しようかと。
ホテルの外観と内装。
メニューはこの通り、セゾン11550円、富士屋浪漫14000円、シェフスペシャルディナー18000円の3種類。ちなみに人はメニューを3つ提示されると真ん中のものを選ぶ傾向にあり、ホテル側もおそらくそれを計算に入れているだろうから、一番人気は富士屋浪漫になるかと。私も富士屋浪漫を選択。メニュー表もかなり手の込んだ作りになっている。
アミューズと前菜の人参とオマール海老のテリーヌベビーリーフのサラダを添えて。アミューズというのは前菜のさらに前に出てくるちょっとした品。
松茸入りのコンソメスープ。味は普通。というか、前菜のオマール海老にしても、このスープの松茸にしても高い素材を使っているのはわかるけど、予想外においしいというのはなくて、こんなものかというのが率直な感想だ。
金目鯛のポワレ トリュフのエキュームとパン。トリュフを使っていても特別においしいという印象は残らなかったな。
メインディッシュの牛フィレ肉のステーキ 栗のバターソースと赤ワインソース。手前左にあるのが栗のバターソースだったと思うけど、甘みはあるものの、これが肉にものすごく合うかというと、やっぱりものすごく美味しいとは思わなかった。
洋梨のコンポートとシャーベットに紅茶、コーヒー。
ということで、結婚式で出てくるような正統派フルコースではあるんだけど、特別おいしいと思った品はひとつもなかった。なんていうのかな、一言で言うと美味しんぼの料理対決で出てきたら負けるタイプの料理。トリュフやら松茸やら高い素材を使ってはいるものの、どこか保守的な感じで、攻めの姿勢を持って工夫を凝らしている人気レストランの料理には勝てないなという感じ。
この感想は、このディナーだけで判断したものではなくて、朝食も昼食も、ひと通り「ザ・フジヤ」以外のダイニングでもひと通り食べた上でも改めてそう思った。だから、よくも悪くも「伝統を守る」という保守的なところがこのホテルのカラーなんじゃないかなと思う。
ということで、結論としては、よくも悪くも富士屋ホテルの料理は保守的なので、美味しい料理を貪欲に追求したいとかなら、他のとこ、例えばオーベルジュ・オー・ミラドーとか、もうちょっと手頃なところならLYS(リス)とかで食べたほうが満足はできると思う。でも当時の外国人向けのホテルのもてなしなり料理なりを今に伝えるという意味では、それはそれで価値のあることなので、富士屋ホテルのスタンスはこれでいいんじゃないかとも思う。
場所は宮の下にある。箱根湯本から強羅に向かってケーブルカーに乗っていけばよい。宮の下に着けば、一番の見所はこの富士屋ホテルなので、どう歩いても勝手に着くかと。